尾見賢司(株式会社日本マイクロシステム 開発部 部長 / DIYアドバイザー)

DIYを楽しむすべての人に、手軽に使える設計ソフトを――。「caDIY3D(キャディースリーディー)」プロジェクトの発起人であり、当社開発部部長の尾見賢司よりみなさまへ。設計ソフト「caDIY3D」誕生から今日までの経緯、製品に込められた開発者の熱い思い、さらには未来へ向けたビジョンまでをご紹介致します。

caDIY3D(キャディースリーディー)誕生のきっかけ

– 設計ソフト「caDIY3D」の開発は、どのようなきっかけでスタートしたのですか?

当社は主要事業として企業様向けのソフトウェアや装置の開発等を手掛けていますが、一方で、外部企業様の状態に左右されずに開発や販売を頑張れる自社商品も作りたいという意見が、6~7年ほど前からありました。そこで社内の開発担当部署へも広くアイデア募集がアナウンスされる中で、「じゃあ私が作っているCADソフトを商品化しませんか?」というところからプロジェクトが始まったんです。

caDIY3D-Xの画面

caDIY3D-Xの画面

ソフトウェアとしてある程度動く段階までは自分で作って社内プレゼンしたのですが、とはいえ持ち込みの企画提案ですし、私自身は当時カーナビゲーションの開発を主に担当していましたので、カーナビの開発を午後7~8時頃までして、そこからまた夜中までずっとcaDIY3Dの開発をして……、そういう時期が半年以上はあったでしょうか。商品開発の立ち上げの部分がいかに大変で難しいかを痛感した時期でもありましたね。

caDIY3Dがどう生まれたかというあたりには、私の個人的な経緯も関係しています。小さい頃からものづくりや工作が好きだったという面もあるのですが、私自身がDIY・日曜大工を始めたのは、十五年ほど前に家を建てたのがきっかけでした。最初は右も左も分からないながら、ホームセンターへ行ってノコギリとカナヅチと板を買ってきて、釘を使って、犬小屋みたいなものを作ったり。そこからだんだん作りたいものも本格的で複雑になってくると今度は、「設計図がないとものが作れないな」と感じるようになってきて。頭の中で「こことここを組み合わせて……」といったイメージは出来ますが、実際に木材を切ってしまってからではもう元に戻せないですからね。やはり設計図が必要だなあ、と。

caDIY3D-Xの画面

では設計図をどうやって描こうかというところで、いろいろと有名なフリーソフトや体験版等のCADも試してみたのですが、これがなかなかやはり難しくて。趣味で物事をやろうと思うと、まとまった時間はほぼ土日に限られますし、CADの使い方を覚えるだけでもすごく時間がかかったりだとか、いざ覚えて図面を描いて、ものを作って、さあまた次となった時にはもう操作を忘れちゃっていて。やろうとしているのは立方体を組み合わせて構造を検討したり長さを決めたりとごく単純なことのはずが、多くのCADでは、綺麗なグラフィックを作るとか、質感を表現するとか、自由な形を好きなようにっていうところが、日曜大工で使うにはかえってオーバースペックといいますか。もっと単純な図形を組み合わせるような感覚で、かつ3Dで設計して、構造が検討出来るソフトがあれば良いのではと考えました。

そこで少し勉強もして個人的に作っていたのが、2xBuilderというソフトです。一番最初は本当に、2×材の大きさの立方体があって、それを数値入力でx方向に30mm動かすとかy方向に動かすといったことしか出来なかったものを、マウス操作で見たままに動かせるように、いろいろ拡張してcaDIY3Dの原型に近い形までは作っていったんですね。一応フリーソフトということで当時から公開もしていました。ある程度ユーザー様もいて、機能へのご要望等も頂いていたのですが、本業が別にあってのフリーソフト開発となると、私自身アイデアはあってもなかなか充分にリアクション出来ない状態で。何とかお応えしたいんだけどな、っていう。そんな思いはずっと温めていたんです。

こういった経緯と、「会社として自社商品を」という気運・タイミングもあり始まったのが、caDIY3Dなんです。

「いかに簡単に操作できるか」~製品に込めたコンセプトとこだわり

caDIY3D-Xのプリセットデータ(一部)

caDIY3D-Xのプリセットデータ(一部)

– 本製品に込められたコンセプトや開発段階で心掛けたこと等、開発者としてこだわったポイントについて聞かせて下さい。

やはり、「いかに簡単に操作できるか」、そこが一番ですね。マニュアル等を見ていくつも手順を踏まないと何か結果が出ないようなつくりにはしたくなくて、見たままに動く、見たままに結果が出る、という部分を心掛けてきました。今でもそうですが、1つ機能を追加するにしても、使う人が戸惑わないか、チームでも話し合って、相当こだわって検討しています。

あとはやはり、「すぐ使い始められる」という点。2×材等、市販されている規格に準じた木材をプリセットすることで、ユーザー様が即座に棚や机やイスの設計を始められるようになっています。いろんな用途で使って頂くために、ブロック、レンガ、波板等々、日曜大工で使う様々な素材も登録されていて、そこも他のCAD製品にはない特徴です。

他のCAD製品に無い機能という意味では、アニメーションや効果音、吹き出しといった、遊び心の部分も大切にしています。現実空間でものを動かしているのに近い感覚を感じながら、一般の方に楽しんで使って頂くための効果や演出の部分ですね。使っていて楽しいというのは、やはり大事ですから。

caDIY3Dの代表的な機能の1つである木取り図も、現在の形ではないにせよ、かなり早い段階からその構想はありました。現実の作業では、例えばホームセンターで1本6フィート等の長さが決まった木材を購入して、それを切って棚なり机なりを作るわけですが、一般的なCADには部材を切り出すっていう視点は何もない。DIY用途のCADという面で言うと、木取りを支援する機能は是非ないといけないだろう、と。

開発からPR、流通、販売までのチャレンジ

caDIY3D-Xの画面

caDIY3D-X(左)、caDIY3D+(中)、caDIY3D(右)

– 商品化実現までにはクリアすべき課題も多々あったかと思います。最もチャレンジングだったこと、苦心した点はどのあたりでしょうか?

当時、企業様向けのソフトとは異なり、一般のお客様へソフトを販売するためのノウハウが当社には充分にありませんでした。難しかったのも、まさにその部分でしたね。まずどうやって知って頂くのか、どう販売していけば良いのか、一般向けソフトウェアの販売や流通に関して一から調べ、「ものを作ってPRして販売する」という行為自体へのチャレンジを重ねていきました。

お客様へは可能な限り安くご提供して、広く使って頂きたい。しかし勿論、ソフトウェアの開発そのものにも膨大な時間と、努力、勉強が必要となりますから、特にその開発費の回収といかにバランスを取って進めていくのか、それは本当に悩みどころで。 そこのせめぎ合いというか、安く提供したい一方で、開発費も回収しないといけない、開発費が回収出来ないと、会社の中では事業として存続出来ない、というところ。 本当にたくさんの人に買って使って頂きたいですし、これからもそのための様々な取り組みを引き続き行いながら、新たな開発も進めていければと思います。

「使いやすい!」と言って頂ける喜び~お客様からの声

尾見賢司

– caDIY3D初リリースから今日の普及まで、多くのお客様から頂いた声や出会いの中から、印象的なものを教えて下さい。

お客様から「使ってます!」「使いやすい!」と言って頂くのは本当に嬉しいです。「マニュアルを読まなくてもここまで出来た」、「たった30分でこんな設計図が描けました」というような声をお聞きすると、開発者としても、ああ、良かったなあと感じます。 最近はSNSやブログ等でも、そういった発信をして下さる方が徐々に増えてきました。

JAPAN DIY HOMECENTER SHOW等、商品PRの場として出展している展示会でも同様のお声掛けを頂くことがあります。caDIY3Dで描いた設計図を、わざわざ紙に印刷して展示会へ持ってきて下さった方なんかもいらして。こちらも嬉しくてその方とはその場で30分も話し込んでしまったり(笑)。

展示会への出展を始めた当初は、DIYというカテゴリーにおいて異質ともいえるソフトウェア製品を、とにかくご来場者お1人お1人に「これ、設計ソフトなんです」とご説明していく感じでしたね。一般のお客様との出会いは勿論、「みんなの木工房 DIY好き」代表の堀口様やスターエムの大久保様等、現在まで続くお付き合いの多くも、展示会での出会いがきっかけでした。出展する度に各所との繋がりが増えていきましたね。

DIYを共通項に~各企業様とのご縁や取り組みについて

– では、本製品を通じて広がった各企業様とのご縁や取り組み等についても、具体的にいくつか紹介してもらえますか?

実はホームセンター各社の社員様にもcaDIY3Dユーザーがいらっしゃるのですが、例えば「グッデイ」を運営されている嘉穂無線ホールディングス様とはお打合せの機会も多く、caDIY3Dの良さを高く評価して頂いていると感じます。これまでにもワークショップやスタッフ様向けの講習会等ありましたが、今後いっそうコラボ的なものが出来ると良いですね。

ビルド・アップ様との提携でスタートした木材カット宅配サービス「Kicori便(きこりびん)」は、浸透度としてはまだこれからのところですが、caDIY3Dで設計して、設計した通りの木材が家に届けば便利だなっていうのはリリース当初からあった意見で、ようやくそれが実現出来たという意味では大きな進歩だと思います。「設計してものを作る」というところに向けた新しいやり方のご提案として、進めていければ。

昨年はターナー色彩様、平安伸銅工業様等に御協力を頂いての塗料データ、パーツ実装やコンテスト開催もありましたが、DIY関連大手企業の方々とご一緒に何か出来ること自体、私にとってはいまだに夢のようなお話で。このソフトを通して、ドゥーパ!様、tukuriba様、アルブル木工教室様等とも引き続きお付き合いを継続させて頂きながら、さらにDIYやものづくりを盛り上げていけたら大変嬉しく思います。

教育現場への貢献~中学校技術・家庭科(技術分野)等の教材として

caDIY3Dを授業で使用した際の様子(島根大学教育学部附属義務教育学校)

caDIY3Dを授業で使用した際の様子(島根大学教育学部附属義務教育学校)

– caDIY3D-Xは、中学校技術・家庭科(技術分野)等の教材としても全国の学校で利用されていますね。このソフトが教育分野からも注目され授業現場にマッチしている要因はどういったところにあるか、開発者の立場から考えを聞かせて下さい。

もともと、当社の社長から「簡単に使えるCADソフトであれば学校現場にも喜んで頂けるのではないか」という提案もあり、まずは教育分野の皆様にも知って頂こうということで教育ITソリューションEXPO等の展示会に出展するところから始めました。そういった場で少なからずご興味を持って頂けたというのは大きかったです。その後少しずつ個別に各先生がお問い合わせを下さるようになったわけですが、やはりそういったニーズがあったんだろうなということですよね。

先生方にお聞きしても、木工の授業って何十年と変わっていない、と。私たちが子供だった数十年前と現在の技術の授業とでは当然内容に変化があるわけですが、木工の部分に関してはほとんど変わっていないというお話で。今の時代、仕事で設計を担当する技術者になったとして、手描きで図面を描くということはほぼなく、必ずCADソフトとかCGのソフトを使うのですが、それが授業では扱えていない。問題となるのはやはり、操作が難しすぎるんですよね。定められた技術の時間数内で、そういったCADソフトの操作を学んで、図面を描いてものを作るまでのプロセスをとてもカバーし切れない。その点で、触っているうちに操作がなんとなくわかる、マニュアルを読まなくてもわかる操作性のCADソフト、それがやはり教育現場にはマッチしたのではないでしょうか。 日曜大工のツールとしても、限られた時間は作業に充てたい場合に、やはり設計はしたいんだけどそこに時間はかけたくない、出来るだけ簡単に済ませたいというニーズを満たせるソフトになっていると思います。

今後も全国の学校で教材としてどんどん使って頂きたいですね。理系の進路じゃないとCADに触れる機会もなかったりするでしょうし、「CADって別世界」みたいなイメージもいまだにある中、「難しいからものづくりとか技術系は苦手」じゃなくて、どんな子でも「考えることが楽しい」と感じてもらえるきっかけになれば。生徒さんたちが大人になってDIYをしたときに「あ、そういえば中学校のときに使ったあのソフトがあるな」なんて思い出してもらえたら、なお最高ですよね。 あるいはcaDIY3Dを使った生徒さんたちの中から、大人になって業務用のCADを使ったり、ものづくりに携わる人材が生まれるとすれば、それも本当に素晴らしいですし。

自身のDIYライフでも、caDIY3Dが大活躍

寝室のパソコンスペース

寝室のパソコンスペース

– DIYアドバイザー資格も取得している尾見さんですが、プライベートなDIYライフにおいてはcaDIY3Dをどんな風に活用していますか?

行き当たりばったりでものを作ることはまずなくて、必ずcaDIY3Dで図面を描いています。作業場もそれほど広くはないので、いかに効率良くものを作れるかは結構大事で。デザインや構造をcaDIY3Dでシミュレーションしてから作ればやはり失敗が少ないですし、特に大きなものになってくると、設計図がないと、現物合わせだけじゃちょっと作れなくて。小屋なんかは、屋根から作るっていうわけにはいかないんですよね。土台から作っていかないといけなくて、それをどういう順番で作っていこうかとか、こことここに木があるとこっちからビスは打てないよねとか、電動ドライバーこれ入らないじゃんとか、そういうのを頭に入れながら設計をして。だから、やはりシミュレーションするってことですよね、ものづくりを。穴を1つ空けるにしても、先に穴を空ける方が安全に作業出来て良いのか、木材を切ってから穴を空けたほうが良いのか――

どう作業して、どう加工して、どう組み立てるかを、図面を見ながら考えて、こういう加工は家では難しいなというところがわかれば、別の形、仕組み、構造をまたcaDIY3D上で考える。そんな使い方をしています。

最近は作品というよりは、木工機械みたいなものを中心に、caDIY3Dでシミュレーションして自作したり。トリマーテーブルとか、ディスクサンダーとか。便利なものが出来上がると、やはり嬉しいですね。実はcaDIY3DのPRも兼ねてブログ等でも公開しているんですが、ブログで人気なのは最近だとトランスフォームするベンチですかね。このベンチは斜めの材料とかを結構使っていますから、手描きで図面を描くとなると長さを求めたりするのが凄く難しい。でも、caDIY3Dだと形を作って寸法を取ればすぐ出来ますからね。このベンチは筋トレ用に作ったんですよ、最近全然使えていないですが(笑)。

トランスフォームするベンチ

作品名『トランスフォームするベンチ』

ディスクサンダー

作品名『ディスクサンダー』

端材で作った引き出し

作品名『端材で作った引き出し』

古い扇風機のリメイク

作品名『古い扇風機のリメイク』

今後に向けたビジョンと、あらたなお客様へのメッセージ

笑顔の尾見賢司

– 最後に、caDIY3Dの今後に向けたビジョンと、あらたなお客様へのメッセージを聞かせて下さい。

今後、caDIY3Dをプラットフォームとした流通であったり、コミュニケーションであったり、そういったものが出来ると良いなあと思っています。Kicori便にも通じますが、いろんな販売店様と連携出来るようにしていけたら。コミュニケーションツールとか流通の入口といった形、設計から~ものを買って~ものを作るというところまでcaDIY3Dをさらに活用して頂けるようにしていきたいです。

例えば木材以外に釘もネジもcaDIY3Dで設計したものが手元に届く、ですとか、設計に使えるパーツをもっと幅広くして、ノブ、レバー、取っ手とか、そういったものをcaDIY3Dの中で何でもあれこれ選んで試せる、みたいな形になると、もっと面白いですよね。

caDIY3Dの特長である「簡単ですぐに図面が描ける」という部分には、設計をすることにとどまらずに、最後までものを作って楽しんで欲しいという開発者としての思いもあります。従来のCADソフトできちんとした図面を描こうとなるともうそれだけで疲れちゃうとか、やった感があってもういいやとなりがち。そうではなくて、平日の夜に1時間でもちょこちょこっと図面を描いて、週末に買い出しに行って、ものを作る、その買い出しの部分もcaDIY3Dで完結出来れば、あとはものを作るだけ。そういう、有効な時間の使い方もこれからご提案出来れば。

「図面を描く」ということに高いハードルを感じる方もまだ多くいらっしゃると思いますが、そういう方にこそ是非一度caDIY3Dを使ってみて頂きたいですね。

caDIY3D
cadiy3d_logo

DIY(日曜大工、木工、ガーデニング)用の3DCAD(設計ソフト)。

caDIY3D-Xは、手軽に立体図面を作成できるWindowsアプリ「caDIY3D」シリーズのVer.3製品です。

各種木材をはじめとする3Dオブジェクトを積み木感覚で操作して設計図を作成。材料取りの確認に最適な「木取り図」等をもとに、DIYを楽しむことが出来る便利なツールです。

中学校技術・家庭科(技術分野)等の教材としても全国の学校で利用されています。

◇ caDIY3Dの機能紹介 cadiy3d.com/wp/features/
◇ caDIY3Dをダウンロード cadiy3d.com/wp/product_download/

株式会社日本マイクロシステム
cadiy3d_logo

当社は昭和57年に、基板検査治具を作る工場として創業致しました。 ”お客様に信頼いただける製品を自分たちの手で造り上げる” それが創業以来の当社の姿勢です。

現在では、ソフトウェア、ハードウェア双方の開発製作を手がける会社として独自の発展を遂げておりますが、一貫して“ものづくり”の精神を忘れず、より一層の品質向上と信頼の提供を目指しています。

生産現場での信頼の置ける品質システムの構築に努め、お客様にご満足いただける製品をお届けできるよう、日々努力していきたいと考えております。

◇ ホームページ https://www.jpms.co.jp/