つるつるな木肌とビシッと直角が出た材料を手に入れるには
ホームセンターの木材売り場に行ってみると、SPFやスギ、ヒノキといった樹種や、90mm角、1×4材と言った断面サイズ、木材の長さの分類の他に、「荒材」と「仕上げ材」の2種類があることがわかると思います。
「荒材」というのは、原木(丸太)から、指定のサイズをカットしたそのままの状態(つまりノコギリで切った直後の状態)の木材を意味します。対して、仕上げ材というのは、荒材の状態から、カンナ盤という木工機械を通して、表面をプレーナー仕上げ(カンナ掛け)をした木材を意味します。
それぞれに用途があり、荒材は、目に見えない部分(家の構造部分など。壁の中に使ったり。)で仕上げを気にしない場合に利用されます。仕上げをしていない分、お安くなっています。
仕上げ材はカンナ掛けしてあるだけあって、木肌はつるつる。見た目も良いです。家具などの手が触れる場所に使う木材は仕上げ材を使いたいですね。ちなみにSPF材(1×4材は2×4材など)はプレーナー仕上げされた材料となります。
とは言え、仕上げ材を実際に手にとってみると、表面がガサガサだったということもよくある話。サンドペーパーでごしごししても良いのですが、沢山の材料となるとかなり大変。
そんな時に活躍するのがカンナ盤です。カンナ盤には大きく分けて、手押しカンナと自動カンナの2種類があります。今回は手押しカンナについて。
手押しカンナ盤とは
その名の通り、木材を手で押してカンナを掛けるカンナ盤です。それに対し自動カンナ盤は、木材を自動で送ってカンナ掛けを行います。
それぞれ用途が異なり、どちらも表面を削ってキレイな木肌にすることが出来るという機能は同じではありますが、手押しカンナ盤は「カネだし」と呼ばれる、木端の直角を出す加工に用いられます。対して、自動カンナ盤は板の厚みを変える場合に利用されます。
手押しカンナ盤でも板の厚みを変えることは出来るのですが、手加減次第でいくらでも削ることが出来るため、同じ厚みの板を複数枚作るといった加工は出来ません。きちんと木材を製材(例えば、反ってしまった板を平面にするなど)する場合は、両方のカンナ盤が必要となってきます。
手押しカンナ盤大図解
前定盤
切削する材料をのせる定盤。切削される前の材料がのる。前定盤側に木材を乗せて、右から左方向へ材料を押し出して削る。
後定盤
切削する材料をのせる定盤。切削された後の材料がのる。
安全カバー
木材を削るためのカンナ刃に触れないようにするための安全カバー。安全カバーを付けた状態で切削を行う。絶対に外したりしてはダメ!
スイッチ
電源を入れるためのスイッチ。
定規(フェンス)
手押しカンナ盤のもっとも重要なパーツ。定盤と定規(フェンス)を直角に調整した後に、材料を削ることで、カネだし(直角だし)を行う。
削る材料は定規に押し当てるようにして押し出す。
ノブボルト
定規を前後に移動する際には、このボルトを緩めて移動する。
レバー
定規を直角以外の角度にする場合は、このレバーを緩めて角度調整を行う。
切り込みハンドル
木材の切削量(前定盤と後定盤の段差)を調整するためのハンドル。左右に回すことで、前定盤が上下に移動する。
カンナ屑排出口
木材を削った際に発生するカンナ屑が、この排出口から勢いよく吹き出す。集塵機などに接続して利用しないと辺り一面カンナ屑だらけになること間違いなし。 上の写真には集塵機の接続アダプタ代わりの異径塩ビパイプがはめてあります。
電源コード
電源コードです。
切削の仕組み
手押しカンナでは、前定盤と後定盤の段差によって、材料を切削します。一度に切削できる量は~3mm程度ですが、いきなり大きく削ると失敗すると取り返しがつかないので、大きく削りたい場合は1度に削ろうとせず、何度か削って仕上げるようにします。カンナ刃への負担も減ります。
前定盤に材料をのせ、ゆっくりと後定盤の方向に向かって押し出す。
カンナ刃は最高到達地点が後定盤の高さと同じになるように合わせておきます。カンナ刃の上を材料が通過すると、表面が切削されます。
カンナ刃は、図で言うと時計回りに回転します。木材には順目と逆目がありますが、順目になる方向に削るとキレイに仕上がります。(とは言え、順目と逆目を見極めるのはなかなか難しいです)
そのまま送り出していくと、後定盤に材料が移動していきます。この時、後定盤から材料が浮かないように注意しましょう。
直角を出す仕組み
手押しカンナを利用する最大の目的は、材料の木端を直角にすることです。例えば、板矧ぎ(細い板を並べて木端を接続することで幅広な板を作ること)する場合でも、木端の直角が出ていないと、継ぎ目に隙間が出来たり、平らな板にならなかったりという結果になることは容易に想像できます。
そんな時に手押しカンナを使えば木端の直角を出すことが出来ます。
定盤と定規(フェンス)を直角に調整します。直角を出す木端を下にして、定規と定盤に押しつけるようにして、木材を削っていきます。
斜めになっている部分が削られます。基準面(定規に当たっている面)と木材に隙間が出来ないように注意しましょう。
最後まで削ると、木端の直角が出た木材を作ることが出来ます。
安全に作業するために
手押しカンナでは、材料を定盤の上で滑らせるだけで、簡単に木材を削ることができますが、削っている最中は安全カバーがあるとは言え、カンナ刃が高速に回転してむき出しになります。ちょっとでもカンナ刃に手が触れると大けがに繋がります。
送り出し前の安全カバーの状態。完全にカンナ刃を覆った状態。
材料を送り出すとカバーが押されて、回転し開いていく。ここで材料とカンナ刃が接触していく。
カバーはバネで閉じるように出来ているので、全て送り出すと、勝手に閉じてくれます。
簡単な作業のつもりでも、定規(フェンス)に押しつけながら、定盤から浮かないようにスムーズに送り出す。っといろいろ気を配っていると、
ついつい送り出す手の小指がカンナ刃に触れてしまった。なんてことにならないように注意する必要があります。ほんの一瞬触れるだけで身がえぐられます。
そうならないためにも、プッシュブロックと呼ばれる工具などを使って慎重に作業を進めましょう。
プッシュブロックは自作することも出来ます。万が一プッシュブロックがカンナ刃に当たったとしても、ブロックが削れるだけなので怪我をするより何倍もましです。
Bench Dog(ベンチドッグ) PUSH-BLOC プッシュブロック
工作機械、特に木を切ったり、削ったりする機械は、ものすごい爆音がします。
大きな音がするとついつい焦ってしまうので、耳栓やイヤーマフなどをつけることで音を軽減し、落ち着いて作業しましょう。
粉じんも出ますから、防護メガネ、粉じんマスクも忘れずに!
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手押しカンナで製材の第一歩【まとめ】
手押しカンナを導入することで、材料の選択肢が広がって、安い荒材も素材として選択肢に上がってきます。製材の手間を考えると、仕上げ材を買ってきた方が早くて安上がりになるかもしれませんが、製材が出来るようになると、作品設計の自由度が増すことは間違いありません。
まっすぐに、直角に。は、加工の基本。カンナ盤で削った木材は、つるつるの木肌になるのでテンションも上がります。
荒材からきちんと製材しようと思うと、手押しカンナと自動カンナの両方が必要ではありますが、まず入手するなら手押しカンナが良いと思います。
ワンランク上の本格木工を目指すのであれば欲しい設備の一つですね。
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